[映画]ノーマンズランド

ノー・マンズ・ランド [DVD]

ノー・マンズ・ランド [DVD]

?踏んでも爆発しないが、足を離すとあたり一面が吹っ飛ぶという「ジャンプ式地雷」を体の下に仕掛けられたセルビア軍との戦闘のさなか砲撃によって塹壕に飛ばされて気を失っていたところセルビア兵士によってボスニアの兵士。人類はえげつない兵器を作っているもんだ。国連軍が地雷の信管をはずそうとしても周りが石でブロックされているので無理。

?それにしてもセルビア側がヘルメットを被り軍人スタイルなのにボスニアの兵士はローリングストーンズのTシャツにジャケットと、日本の猟友会の皆さんだってもう少し重装備だぞといいたくなるようなカジュアルさ。後で、監督のインタビューをみて知ったのだが、ボスニアはあの戦闘があるまでは軍隊がなかったということで実際、着のみ着のままで戦場に向かったらしい。「人間には宗教や民族の違いの前に音楽の違いがある。ビートルズ派か、ローリングストーンズ派かだ」とナイスなコメントをしたのは主演のブランコ・ジュリッチ

?イギリス人の女性テレビレポーター役が「奇跡の海」にも出ていたカトリン・カートリッジで、この女優さんは2002年に41歳の若さで早逝したらしい。

[本]

楽園〈上〉

楽園〈上〉

楽園 下

楽園 下

・気になった個所を以下に抜き書き

 滋子はふと、以前取材で会ったある人物の言葉を思い出した。人間の幸福も不幸も、本人が決めるのではない。まわりにいる者が決めるのだ、と。(上p172)

 花田先生も微笑んでうなずいた。「はい。人は誰でも絵を描きながら生きていますから。たとえ鉛筆は持たなくても」(上p234)

 「彼女に会って、わたしは初めて、人生が外側から破壊される瞬間を目の当たりにしました」
 外側から壊される人生。その瞬間。
 「犯罪とはそういうものです。そういう破壊を起こす代物なんです。わかっていて、わたしは警察官になりました。でも、わかっていると思っているのと、本当にわかるのとは大違いですね。だから新米だというんです」(上p274)

 見ぬもの浄し〜という言葉が、頭に浮かんだ。そうだ。昔の人は正しい。世の中には、知らない方が身のためだという事柄があるのだ。(上p397)

 窓の内側でカーテンが揺れていた。うじゃじゃけた色合いの、なんかよくわかんない柄の、厚いカーテン。すっごい趣味が悪いと思う。(上p408)

 「身内のなかに、どうにも行状のよろしくない者がいる。世間様に後ろ指さされるようなことをしてしまう。挙句に警察のご厄介になった。そういう者がいるとき、家族はどうすればよろしいのです?そんな出来損ないなど放っておけ。切り捨ててしまえ。前畑さんはそうおっしゃるのですか?」
(下p266)

 そのとき、滋子は奇妙なものを見た。向子がわずかに胸を張ったのだ。子の命を奪う権限を持つのは、子に命を与えた母親だけだと主張するかのように。(下p340)

 誰かを切り捨てなければ、排除しなければ、得ることのできない幸福がある。
 滋子にはなじみのない、よくできた物語のようにしか思えない海の向こうの宗教は、人間は原罪を抱えていると説く。神が触れることを禁じた果実を口にして、智慧を知り恥を知り、しかしそれによって神の怒りに触れ、楽園を追放されたのだという。
 それが真実であるならば、人びとが求める楽園は、常にあらかじめ失われているのだ。
 それでも人は幸せを求め、確かにそれを手にすることがある。錯覚ではない。幻覚ではない。海の向こうの異国の神がどう教えようと、この世を生きる人びとは、あるとき必ず、己の楽園を見出すのだ。たとえ、ほんのひとときであろうとも。(下p350